駅前のドトールより
イチロウです。
今月 中頃やっとのことで
遠隔読影室と病院とのPACSが接続することができました。
当初予定は6月中旬がどんどんずれ込み 7月末に接続予定が
どうしても病院とつながることができず、
紆余曲折の後
なんとかお盆明けに接続できました。
先週試しに読影を1日やってみました。
もちろん他には誰もいないので一人ぼっちでしたが
読影の遅延などは一切なく、自分の病院でやっているのと
なんら変わることがありませんでした。
カルテは病院のカルテを見に行くという仕様で
見ることができ、書き込むこともできますが
PACSとカルテとは当然ながら連続性はありません。
この先定年後どうしたら1時間以上もかけて遠い遠い自分の病院に
通っていけるだろうかという不安感が
かなり解消されたのでした。
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味を占めて時間外仕事にもかかわらず運動を兼ねて
土曜日徒歩で遠隔読影室へ行き
1−2時間ほど仕事をしてしまいました。
さて、昨日の症例ですが、
放射線科医には簡単だったと思いますが、
放射線科医がいない日に読影を行なった外科医が
腹腔内遊離ガスということで開腹までしたのに
消化管の穿孔部位が見つからないとのことで
出勤してきた放射線科医にたづねてきたという症例でしたが
実際は、気腫性膀胱炎だった症例です。
気腫性膀胱炎から膀胱壁の穿孔から腹腔内に
遊離ガスが漏れ出たものでした。
開腹術中写真では膀胱の壁がボコボコしているのが
見受けられました。実際には大きな穴などは特定できていません。
Pubmed でemphysematous cystitis で検索すると474件の結果が出ますが
emphysematous cystitis, pneumoperitoneum, あるいは peritoneal free air
で検索するとたったの8件となってしまいます。
8件のうち人間でかつ、関連していると思われる文献は3件しかありませんでした。そのうちのMurataらは
Murata Y, Matsuo Y, Hiraoka E. Successful Conservative Management of Emphysematous Cystitis With Pneumoperitoneum: A Case Report and Literature Review. Cureus. 2023 Aug 19;15(8):e43769.
では14 例の報告をまとめていますが、14 例中11例が女性で、
本症例も女性
平均年齢は74.5歳で 50ー99歳であった。
14例中報告された12例のうちショック状態は4 例で意外に少なく7例は
循環動態は安定し、1例が頻脈でした。当症例も循環動態は安定。
腹部所見も 記載なしが3例、下腹部の圧痛ありが4例、筋性防御ありが3例
腹膜刺激症状なしが4例 でした。
腹水は 記載なしが3例、腹水ありが5例、腹水なしが6例
外科的検査が行われたのが9例でそのうち
膀胱穿孔があったのが4例でした。外科検査施行せず画像で膀胱穿孔が判明したのが1例
手術したのに膀胱穿孔が確認されなかったものも5例認めています。当症例も同様です。
予後としては報告のあった13例のうち11例は生存、2例は肺炎や膀胱破裂で死亡された。
当症例も予後良好でした。
竹林らの日本語の報告では 日臨外会誌 72, 782-785, 2011でも
腹腔内遊離ガスを伴う非穿孔性腹膜炎を呈した気腫性膀胱炎の1例 として報告されていますが
気腫性膀胱炎は本邦で60例の報告があるが,腹膜炎をきたしたものは3例で、
自験例のように膀胱の穿孔,破裂を伴わない腹膜炎の報告はないとして
報告されています。
以上、気腫性膀胱炎に腹腔内遊離ガスを伴った稀な症例でした。