腹壁、後腹膜腫瘍シリーズ1回答

駅前のドトールより

イチロウです。

 

最近、思っていることがあります。それは

お墓。そんな年齢になりました。

 

以前、ほとんどというか30−40年以上付き合いのない

叔母から私の姉に先祖のお墓の管理を私にして欲しいと

頼んできたことがありました。

 

私からすると突然のことで、寝耳に水といったところでした。

先祖のお墓がどこにあるのか(仙台のどこか)さえ知らず、行ったこともなかったからです。

叔母から姉への話では、今まで供養料金というのを

支払ってきたというのです。

それがどれくらいの額なのかもわかりません。

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とはいえ叔母夫婦は先祖からもらった東京の土地を

私の父(叔母の夫の兄に当たります)に黙って住み続け、

まあ形的には長男家から横取り(正式な相続をせず)していたので

今更、そんなことを言われても という感覚でした。

 

その話はそのまま現在は立ち消えになっていますが

本日、父の墓参りに久々行ってみて、お墓って

本当に引き継いでいくのは大変なことだなと思った次第です。

 

さて、今日はこれくらい(続きはいずれ)にして

昨日の続きですが

 

こちらは、画像的には一度診断してしまうと

あ、あれね。ということになるのですが、知らないと

え? 名前に一致してねー? となるものです。

 

おそらく体表から触ったり、視診からそのような名前が

ついたものと考えられます。

 

回答は

”インスリンボール”  なのですが、

ボールという呼称には違和感があり、病理学的な結果から

アミロイドーマ と呼称する人もいます(視診的にはボールにも見えなくもない)。

 

果たして、何がこの画像が問題なのかというと

インスリンの効きが悪くなることが最も問題となります。

そもそも、患者さんは右利きか、左利きかによって、お腹に打つ場合

どうしても自分の利腕の近くに打ちがちです。

そうなると、右利きの人は右の腹部に打ってしまいがちです。

この患者さんも右腹部の上下に2つのそれがみられます。

 

しかも、一度インスリンボールができると同部への注射が

痛みを感じにくくなるため、患者さんは楽さを取ってその部位に繰り返し

注射をしがちとなってしまい。ますますボールは大きくなっていきます。

 

なので、糖尿病医が血糖コントロールが悪くなってきた場合は

このインスリンボールのことは念頭に置くことになりますが、

放射線科にCT依頼する時にはインスリンボールの有無などという

依頼目的はほぼ書かれません。私も個人的にそのような依頼目的を見た経験がありません。

 

大抵彼らは血糖コントロール不良で膵腫瘍を含めた悪性腫瘍の除外目的

と書くことでしょう。なので、私たち放射線科医もそっちに集中して

なんか皮膚にあるけど、無関係かもしれないと思って

気にもかけないということが生じえます。

 

しかし、もし悪性腫瘍も見つからなかった場合(この方は盲腸癌が見つかる)、

このインスリンボールが見つかった場合、

糖尿病医は視診で認識しているかもしれませんが

患者さんの衣服を脱がして全身くまなく診察する癖のある糖尿病医でない限り

インスリンボールの存在の認識に至れないかもしれません。

 

そこで放射線科医がすかさず、インスリンボールと読影しておけば

糖尿病医も全身をくまなく診察する必要もなく、狙って、患者さんのその部位を

視診で確認し、そこにはインスリン注射を打たないように指示できるのです。

 

日本語論文ですが、このことに注目して

実際にこのインスリンボールの病理がどうだったのか、

果たしてインスリンの効きが悪くなるのかを検討した論文があります。

それは、楠 和久 ら。インスリン注射による皮下腫瘤の病理組織,画像所見 およびインスリン吸収についての検討。糖尿病 58(6):388~397,2015 です。

これによれば

 

インスリンボールの40%にアミロイド沈着、60%に膠原繊維増生を認めた。

とあります。

後者は、おそらく前者の前段階の状態で、いずれはアミロイド沈着が起こるだろう

と推察しています。

そして、アミロイド沈着が一度起こると同部位からのインスリンの吸収障害が起こる様

なので、前段階の膠原繊維増生の段階(この段階でも吸収障害起こることあり)で見つけて、

早めに患者の指導を行うこと重要です。

 

我われが見ることの多いCTでの画像所見では

毛羽立ち像のような線状影のみの段階が膠原繊維の段階のようで

今回提示したような帯状のある程度の厚みを生じているとアミロイド沈着がみられるようです。

なので今回の症例のような状態ではすぐにでも注射部位を変えることを

患者に提示して、血糖コントロールの状況を確認することが大事と思われます。

ちなみにアミロイド沈着が起こると不可逆状態のようで

今回提示症例は、月日の経過で分厚くなり、石灰化も厚くなってきていました。

 

今回の症例の2021年のカルテに インスリンボールを避けて注射中という

記載があったので、代謝内科医はインスリンボールのことをこの時

認識されたと思われます。

 

もう一度14年前と今回のCT症例を添付しておきます。

14年前に指摘していたらと思います。この時はもしかすると

アミロイド沈着はなかったかもしれません。

今日は以上です。

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