趣味を極める人、趣味のない人 先週水曜日の回答

駅前のドトールより
イチロウです。

最近は以前と同様ドトールに行っていますが、
院内コーヒーもかなりおいしいので助かります。

当院に非常勤でこられて17年以上になるある先生は
最近、かなりある趣味にハマってしまい
これからの目標は、防音室を家に作ることだそうです。

その趣味はかれこれ10年前くらいから始められ
全くのど素人だったのに、時々学会などの演奏会にも誘われたり
今、通っている教室の発表会に出る様になったりして
すでに自分の血と肉となっているくらいの
サックス好きになっています。

一方、私はコロナ前に始めたウクレレは挫折しました。
今は、無趣味に逆戻りです。
むりくりあげれば、マジックやら読書やら、ドラマ見ることだの
野球観戦など色々挙げられますが、
血や肉となっているものは一つもありません(泣)。

先生は何か極めている趣味はおありでしょうか?
さて、先週水曜日にアップした症例の回答ですが、、、

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MRIでもあればよかったのですが、
結局臨床的にかなり詰められてしまった(可溶IL-2レセプ=16,700)ので、施行されず
まれな症例だけに 画像診断医 的にはちょっと残念です。

ダイナミック造影では脾腫を認め、腫大した部分に類円形で内部均一に濃染する
腫瘤が見られます。辺縁が淡く濃染、中央はやや濃染不良で、
後期相でより濃染してはいますが、脾臓ほどは濃染していません。
冠状断、矢状断で見ると上記腫瘤が複数あることが判明しています。

回答は、脾臓原発の 悪性リンパ腫 でした。
ご提示させていただいた画像は実はわずかしか描出されていなかったので
とても気付きにくかったのですが、脾臓の腫瘤の内側に
三角状に同様の吸収域の腫瘤が認められ、内部を血管が貫通していたのです。

ふざけんなよと 言われそうなので
もう少しわかりやすいスライスの横断像と冠状断像をご提示します。
以下。三角状に見える脾門部の腫瘤内を血管が貫通していることが明瞭です。

したがって、腺癌系の原発巣からの脾転移か悪性リンパ腫となります。
実は直腸癌の原発巣があったので、読影では迷いましたが、
実際には 可溶IL2 レセプターが 16,700 U/ML と著明高値
LDH3 も増加しており、悪性リンパ腫を強く疑いました。
同時に胃癌が見つかっており、そのステージング中に見つかったものでした。
脾臓摘出術のみがまず行われ、
Diffuse large B-cell lymphoma の診断となりました。

さて、ここで原発性の脾臓の悪性リンパ腫の論文を紹介します。
もちろんあの黄緑の肝胆膵のMRIのパクリをするわけではありません。
論文の原本を読んでいます。
しかも、あの黄緑本は2021年発刊にもかかわらず引用論文は2006年のAJRのみ
です(実際脾臓原発のリンパ腫の画像論文は稀少)。ちなみにAJR の現在のインパクトファクターは2019年までは3.01とやや低めでしたが
今回の論文は2013年の発刊時は、3.534 とAJRに勝るとも劣っていません。
紹介しても問題なしと思われます。

Li, M, et al. Imaging findings of primary splenic lymphoma: a review of 17 cases in which diagnosis was made at splenectomy. PLoS One. 2013 21;11:e80264
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3837000/pdf/pone.0080264.pdf

原発性脾臓リンパ腫(primary splenic lymphoma: 以下 PSL と略す)
17例の病理データと画像データをレトロスペクティブに解析
CTは16人の患者に、MRIは4人の患者に施行。その表1を引用改変したものを以下

PSLの画像データは肉眼的病理に基づき4つに分類
タイプ1: 均一な脾臓の腫大:1例
タイプ2: 粟粒結節:0例
タイプ3: 様々なサイズの多発腫:4例(当院の症例に相当する)
タイプ4: 孤立性の大きな腫瘤:12例 と最多
病期としては Ahmann の基準に基づき 3つの疾患段階に分類
ステージ1: 腫瘍が脾臓に限局
ステージ2: 脾臓の関与と脾門部リンパ節の関与(当院症例に相当)
ステージ3: 脾臓あるいはリンパ節腫大を超えて、肝臓またはリンパ節に病変があるもの

結果:男性12名、女性5名 と男性優位 年齢中央値=54歳、年齢は31〜74 歳
臨床症状:左上腹部の痛み8例、腰の痛み2例、体重減少1例、発熱1例
5人の患者は無症状。偶発的に見つかった(当院症例は左上腹部違和感ありました)。
病理結果:17例のうち、16例は非ホジキンリンパ腫(NHLと略す), そのうち
びまん性大細胞性B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma: DLBCL)が9例
と最も多かった。
splenic marginal zone B-cell lymphoma (SMZLと略す)が4例
follicular lymphoma (FLと略す)が2例
diffuse red pulp small B-cell lymphoma (SDRLと略す) が1例
nodular lymphocyte-prominent Hodgkin lymphoma (NLPHLと略す) が1例(唯一のホジキンリンパ腫)
画像結果:
CT所見:16例の患者がCTを受け、1例はMRIのみ
16人のCT患者のうち1例のみ単純CTだけ、他15例は造影のみか単純/造影
7例で行われた単純CTでは4例は正常脾実質より低吸収域、3例は等吸収域
造影された症例のうち全例が背景脾実質よりも低吸収域の軽度の造影効果を示した。
14例が筋肉と同等の軽度濃染で、1例のみは肝臓組織に匹敵する明瞭な造影効果を示した。12例が壊死の所見を呈した(当院例も中央部が壊死)。この論文では血管貫通の有無は言及されていません。
症例1が画像提示されています。CTのみ引用します。


MRIについては大したことは記載されておらず、当然施行された4例は全例拡散強調像上高信号です。T2WIで2例が高信号、1例が等信号、1例が低信号。T1WIは脾実質よりすべて低信号。
2例膵臓や胃などの隣接臓器浸潤を呈し
9人の患者が脾門部と傍大動脈にリンパ節腫大を認めた。

以上まとめると 脾臓原発悪性リンパ腫17例を病理と対比 男女比は男性に多く
年齢中央値は54才(31〜74 歳)、左上腹部の痛み8例など有症状は12例、無症状も5例
病理は16/17でnon Hodgkin lymphoma1例のみHodgkin lymphoma
non Hodgkin lymphoma のうち9例が diffuse large cell B-cell lymphoma
CT, MRIなどの画像検査で 12例に壊死の所見が見られ、ほとんどが軽度の濃染を示し
周囲の正常脾臓の濃染より弱い低吸収域を示した。拡散強調像では拡散制限が全例見られた

他、Nakamura T, et al. A Surgical Case of Primary Splenic Malignant Lymphoma Complicating Chronic Hepatitis C. Tokai J Exp Clin Med. 2016 Mar 20;41(1):30-4.
では1例報告がされていますが、単発腫瘤を報告し、ダイナミック造影CTが
提示され、早期に乏血性で、後期相でより濃染してくる遅延濃染の腫瘤を報告し
早期相ではもちろんのこと、後期相でも背景脾臓実質より低吸収域の腫瘤として
報告しています。彼らの論文では脾臓リンパ腫では脾臓悪性リンパ腫の
65%がDLBCLで、その98%がB-cell-lymphoma と言っています。
また、HCV抗体陽性患者が30%という論文を引用し、
患者にHCVが感染すると単球とリンパ球に直接感染するため、
リンパ増殖性疾患の発症につながると考察で述べています。以下Nakamuraら図2,3より

黄緑本が引用しているLuna A らのAJR の2006年の論文は大したことは
述べられていません。総説論文ですが、
Luna A, Ribes R, Caro P, Luna L, Aumente E, Ros PR. MRI of focal splenic lesions without and with dynamic gadolinium enhancement. AJR Am J Roentgenol. 2006 Jun;186(6):1533-47.
古い論文すぎて、この時はT2WIで低信号となることは転移との鑑別になる
と記載されていますが、上記Li Mらの論文の様にT2WIの信号は高信号、等信号、低信号
と様々ですので低信号だった場合はその可能性は高くなるかもしれませんが
腺癌系のメタもT2WIはさほど高信号にならないのであてにはなりません。
一般的には拡散強調像の拡散制限がより強いという点がメタとの
鑑別かもしれませんが、Luna の論文は古いので腹部に拡散強調像を
施行していなかった時代のものでそんな言及はありません。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16714641/
のFig. 15, 16を見てみてください。

以上です。

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