70歳代の男性 腹部膨満感あり、超音波上〇〇が疑われました。

駅前のドトールより
イチロウです。

先週土曜日3月2日に
eTaxで初めて確定申告しました。
もともと国税庁のページから
作成して、印刷して、郵送していたのですが
その手間が無くなった事は非常にありがたいです。

ただ、半日休みを取って
税務署で IDとパスワードを登録しなければなりませんでした
確定申告ではない時期だったのに
ちょっとだけ混んでいました。

さて、

先先週週 横浜イメージングカンファランス(第56回)が
開かれました。
いつものように難しい3問が提出されました。
1例づつ2日、開けて、2日、開けて2日と
合計6日で 問題と回答をアップしていきますね。

1例目はタイトルは
「緩徐に増大し、診断に難渋した肝腫瘍の1例」です。
昨日この問題部分は書いたのですが
念のため重複を覚悟で そのまま書きますね。

まずは回答の選択肢から
①FNH, ②血管腫, ③HCC, ④ CCC, ⑤悪性リンパ腫
です。

70歳代の男性  腹部膨満感あり、超音波で血管腫が疑われました。
超音波上は境界明瞭な内部高エコーの腫瘤がS5, 6に隣接して
存在しています。確か辺縁は低エコーの2重構造だったと
記憶しています(メモ書きより)。

写真を撮るわけにはいかないので
覚えている限りしか書けませんが

単純CT上増大した後の状況では内部に点状の石灰化が多発していました。
造影ではほとんど内部は造影されません。
T1WI はほとんど記憶にないのですが
T2WI ではより小さい結節(実際はS5, 6の腫瘤以外に1−2cm程度の小さいものもあり)
が認められ、

それは液面形成を呈していました。
S5, S6のは増大傾向を有しており、辺縁高信号ですが
中央部分はなんと低信号でした。

1−2cm大の小さいものは内部が結節状に濃染していました。
一方、S5, 6のはほとんど濃染が見られていませんでした。

腫瘤は緩徐な増大傾向を示していました。
その時間的な経過はどれくらいなのかは
伏せられていました。なので緩徐と言う表現以外の
具体的な時間の長さはわかりませんでした。

さて、先生は上記の選択肢のうちどれを選びますか?

選択肢
①FNH, ②血管腫, ③HCC, ④ CCC, ⑤悪性リンパ腫

と言う問題でした。

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まず、石灰化している点から 通常 ⑤の悪性リンパ腫は
考えにくいと思われます。
また、CCC もなかなか石灰化は稀ですし
HCCの石灰化も稀です。緩徐という言葉から
① か ② に絞られるのですが

T2WI で中央部が低信号のものというのが特徴とすると
??? どちらも違う? となります。
しかし、石灰化となると FNH は稀でしょう。
Xu PJ, et al. Helical CT presentation of focal nodular hyperplasia of the liver.
Nan Fang Yi Ke Da Xue Xue Bao. 2006 Oct;26(10):1500-2.(中国語)

では20例中1例で、稀と記載されています。

もっとも Impact factor の高い放射線科雑誌の Radiology から

Brancatelli G1, et al. Focal nodular hyperplasia:
CT findings with emphasis on multiphasic helical CT in 78 patients.
Radiology. 2001 Apr;219(1):61-8.

では 1/124 = 0.8% と言っています。
本当に見ることは稀 という感じです。

文献を当たった人は少ないでしょうが
なんとなく、石灰化とは結びつかない事は感じていると思います。
したがって 消去法で正解に至れます。

しかし、もっと積極的に行くならば
T2WI 上 1−2cm程度の大きさの結節には液面形成あり
という所見です。以下血管腫のfluid-fluid level の論文

①Ghai S, et al. Fluid-fluid levels in cavernous hemangiomas of the liver: baffled?
AJR. 2005;184:82-86
②Lee J, et al. Multiple hepatic hemangiomas with fluid-fluid levels.
Australas Radiol. 2007; 51:310-312
③Soyer P, Bluemke DA, Fishman EK, et al.(ちなみに2番目筆者は私の元ボス)
Abdominal imaging. 1998;23:161-165
④Obata S, et al.Fluid-fluid levels in giant cavernous hemangioma of the liver: CT and MRI demonstration.
Abdominal imaging. 1998;23:600-602

さすがに FNH ではfluid-fluid level は見られません(Pubmed では0件)が、
血管腫では時に見られますし、ADCマップ上の出現率はT2WIより
多いと思われます。

あと別の小さいものに 内部に結節状の濃染がダイナミック造影
にて認められていたことです。
あと、多発していることも重要ですね。
血管腫は多発することが多いです。

ただし、FNHでも multifocal なものを集めてきた論文がありますので
Busireddy KK, et al. Multiple focal nodular hyperplasia: MRI features.
Clin Imaging. 2018;49:89-96
多発、単発のみで判断するのは危険でしょうね。

FNHは多血性であることの方が多いので、
今回のような乏血性腫瘍がS5, 6に
2つ並んで存在するというのはおかしいです。

やはり血管腫と考えるのが妥当です。

ということで

選択肢
①FNH, ②血管腫, ③HCC, ④ CCC, ⑤悪性リンパ腫

のうち ②の血管腫が正解となります。

イチロウ拝

PS. 先日バイエルのクイズ問題を見ていたら、ややばいと思いました。

他施設の先生を批判するのはやりたくないのですが

PI-RADS のパの字もありませんでした。ちょっと悲しくなりました。

というのも移行域こそ PI-RADS をやらないと診断がまずい事になり

患者さんに余計な 辛さを合わせてしまうからです。

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