実は、人の脳で病理学的にそれが溜まることを証明!

駅前のドトールより

イチロウです。

 

さて、前回2017/08/8 火曜日に

MRI造影剤の淡蒼球と歯状核の

T1WI上高信号は造影剤の投与回数と相関する

という衝撃的な論文をご紹介しました。

 

ここで確認ですが

現状、日本の市場に出回っている造影剤は一体

どんなものがあるのか? 整理してみると

後発薬は除いて列挙します。

 

また、わかりにくい化学薬品名ではない

メルマガ読者が慣れ親しんでいる

商品名で記載すると

 

オムニスキャン

ガドビスト

プロハンス

マグネスコープ

プリモビスト(どちらかというとEOBなので、以下EOB)

 

の5種類です。

マグネビストはほぼガドビストに置き換えたと

いう施設が多いという想定のもと

あえてマグネビスト は入れませんでした。

(ちなみにマグネビストは直鎖型です)

 

つまりこの5種類のうち

直鎖型は オムニスキャン と EOB

のみです。

 

EOBは

肝特異性の唯一無二の薬剤であること

Gd自体の量が1/4と少ないこと

から 直鎖型であっても

現時点で使用するしかありません。

 

今の所EOBで

歯状核や淡蒼球への高信号が出現したという

事実は言われていないことから

 

今の所この問題については除外して扱うとして

 

残りの4剤のうち3剤はマクロ環型

となっています。

 

バイエル社ではそれをマクロ環に置き換えてしまう

戦略で マクロ環型のガドビスト を発売し

後発品(マグネビスト)と ライバル会社の直鎖型のオムニスキャンを

一気に掃討しようと戦いを仕掛けたわけで

 

D社の オムニスキャンは

実際にはかなりの市場シェアーの低下を

余儀なくされているようです。

 

ま、そんな市場経済はいいとして

とにかくEOBは対象外として

4種類のGd造影剤のうち3/4がマクロ環という事実を

まず確認しました。

 

さて、前回 神田先生の衝撃論文ののち

神田先生は追加の論文を2015年に発表されました。

それが

非造影T1WI 上歯状核の高信号:直鎖型とマクロ環型ガドリニウムの投与との

関連性について です。Radiology 2015;275:803-809です。

 

ここで明確に直鎖型がマクロ環に対して部が悪いことを

示唆したわけです。

 

こちらも後ろ向き研究ですが

127名と被検者数は多くなっています。

この論文では結論として

歯状核‐小脳比は直鎖型Gdとは関連性が認められたが(P<,0.001)、

マクロ環型Gd曝露との関連性は認められなかった(P=0.875)

歯状核‐小脳比と直鎖型Gdのみに強い関連性が認めた。

 

もう一度言うと

小脳歯状核の非造影T1WI上での高信号は過去の直鎖型Gdの投与と

関連していた。マクロ環投与ではそのような現象は生じなかった。

 

という論文です。おそらくD社や製造元であるG社

は驚いたことでしょう。

 

そして、神田先生の第三段の論文として

それまでの論文のリミテーションとして考えられた

病理学的裏付けを次の論文でお取りになって

発表されています。

 

それがRadiology. 2015 Jul;276(1):228-32.

Gadolinium-based Contrast Agent Accumulates in the Brain

Even in Subjects without Severe Renal Dysfunction:

Evaluation of Autopsy Brain Specimens with Inductively Coupled Plasma Mass Spectroscopy.

ガドリニウム造影剤は重度腎機能障害がない被験者でも脳に蓄積する

—誘導結合プラズマ質量分析法による剖検脳標本の評価—

Kanda T, et al.

 

で3部完結みたいな感じです。

この論文は2つの革命的な話があります。

 

それは、病理でGdの沈着を直接証明したこと

もう一つは、正常腎機能でそれが生じうること

です。

 

そのため、いくら正常の腎機能の人は安全と思って

直鎖型をつかっていても安心はできない

ということです。

 

剖検10例で5例がGd造影剤投与例、5例が非投与例

剖検で脳組織を採取し、歯状核、淡蒼球、小脳白質、前頭葉皮質および白質

のガドリニウム濃度を測定したものです。

 

この10例の中には重度の腎機能障害(eGFR<45 ml/min/1.73 m2)または

急性腎不全の診断を受けた被験者

は含まれていません

 

Gd造影剤投与群のすべての試料でガドリニウムが検出され

各領域の濃度は非投与群と比較して有意に高かった(p=0.004)

領域別の比較では歯状核と淡蒼球におけるガドリニウム濃度(平均0.44 μg/g±0.63)

は他領域のガドリニウム濃度(0.12 μg/g±0.16)よりも有意に高かった

 

というもので

結論は”重度の腎機能不全を呈していない被験者でも、Gd造影剤投与により

脳にガドリニウムの蓄積が生じ、歯状核及び淡蒼球では特に蓄積が多い。”

 

です。

 

ここで先生はえ?Gd造影剤って一体何を使ったの?ですよね。

そしてどんな症例に?ですよ。

 

Table 1から引用では

1例目はグリオブラストーマの症例で4回のマグネビスト(直鎖型)投与

2例目は上顎癌の症例で3回のマグネビスト投与と1回のプロハンス(マクロ環)

3例目は悪性リンパ腫の症例で3回のマグネビスト投与

4例目は脳梗塞の症例で2回のマグネビスト投与

5例目は肺炎症例で1回のマグネビスト投与、1回のオムニスキャン(直鎖型)、1回のプロハンス投与

 

残りの5例は非投与群で、感染性心内膜炎、原発不明癌、大腸癌、脳出血、脳梗塞

の患者様でした。

 

上記のようにマクロ環が2例目、5例目に含まれています。

ですが、ほとんどは直鎖型のマグネビスト投与です。

 

症例数が少ないのでこれのみから

直鎖型が集積で、マクロ環型は集積しない

ということは言えませんが、直鎖型の投与が多きことは言えます。

 

この論文はGd製剤(ほとんどが直鎖型使用)で

正常腎機能患者に歯状核と淡蒼球に(動物ではなく)人間で

実際にGdが投与しない人と比べて有意に沈着するぞ!

ということを

証明したものなのです。

 

今日はここまでで

次回は他の追試論文を見ていきたいと思います。

 

以上イチロウでした。

PS.

そういえば、今週は今日で終わりでしたね。週休2日の病院は

3連休が待っているのですね。

さて、今月のセミナー予定を来週のメルマガで発表しようと思います。

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