DAAについては今日完結します。

駅前のドトールより

イチロウです。

さて、前回DAAについて話しましたが

イチロウ先生 画像のこと話してくださいよー
と言われるのを覚悟で
DAAについて今週中に完結させたいと思います。

前回水曜日にお送りしたメルマガのまとめ

1. 消化器内科の世界ではHCVウイルスそのものをやっつける抗ウイルス薬 DAA(Direct Acting Antivirals )が開発され、その作用機序は3種類あります。
2. 一つ目はタンパクの帯(この帯びのなかに大事なNS5Aが存在)をちょん切るハサミをダメにするプロテアーゼ阻害剤 (ハサミでちょんぎらないとNS5Aが活動できない。)
3. それらはアスナプレビル(ASVと略する), グラゾプレビル となんとかプレビル と命名されている。語尾のプレビルでプロテアーゼ阻害剤とわかる
4. 二つ目はタンパクの帯をちょん切る事で作用できるようになったNS5Aタンパクの働きを阻止するNS5A阻害剤
7. ちなみにNS5Aは、HCVのRNAを捕まえてきて、NS5BタンパクがRNA複製(ウイルス増殖)するのを助けます。注:NS5A と NS5B と混乱しないように。
8. NS5A阻害薬にはダクラタスビル、レジパスビル、オムビタスビル、エルバスビル となんとかアスビル と言う命名がされています。
9. 最後にNS5BタンパクがRNAを複製するのを阻止すポリメラーぜ阻害剤です

で終わったと思います。

今回はこのポリメラーゼ阻害剤について
NS5Aの助けをかりてNS5BはRNAの複製を開始します。
つまりRNAのコピーをたくさん作っていく(ウイルス増殖する)のですが

にせもののコピー配列を途中でつくらせる作用を持ったものがありそれを
核酸型の ポリメラーゼ阻害剤 といいます。

偽物を作らせることで
複製がそれ以上進まなくなる、つまりストップする
RNAの増殖ができなくなる。となります。

このポリメラーゼ阻害剤にはもう一つ
NS5Bの働きそのものをとめるものがあり
つまりNS5Bそのものにくっついてその動きを止めるものです。
非核酸型のポリメラーゼ阻害剤といいます。

このポリメラーゼ阻害剤と
NS5A阻害剤との組み合わせは
つまり
SOF ソホスブビル (核酸型ポリメラーゼ阻害剤)
+ LDV  レジパスビル(NS5A阻害剤)  の組み合わせです。

これだと
耐性型のHCVウイルスにもよく奏功し
耐性型であっても97%の奏功率 がえられました。

SOFソホスブビル の耐性はできにくいですが
不整脈には使えないという 欠点があります。

2017年つまり今年ですね。ついに今まで述べてきた
3種類の作用機序を加えたDAAが登場しました。
2剤に比べてやはり効きは良いようですが
肝障害が出やすいため、毎週肝機能を測定しなければなりません。

さて、ここまで来たがという感じと
さらにさきのすごいDAAがありそうな雰囲気をかもしだしています。
やはり 企業は儲かると知ったらどんどん開発してくるのですね。

ここで一つ重要なことを述べなければなりません
実はHCVは3種類の遺伝子型があります。
日本では、遺伝子型(Gyenotype)1bが約70%、2aが約20%、2bが約10%にみられるといわれています。

幸いなことに日本人にもっとも多いIbに上記
薬はよく効くのです。
現在Ibに効くくすりは5種類出ているのですが
それぞれ特徴があり、禁忌もあるので
患者様の状況に応じて使用することになるようです。

5剤のうち4剤は12週間の投与 つまり
約3箇月で治療は終了です。

日本人に少ないとされるGenotype 2 では1ほどは効かなかったのですが
2015年3月にはソホスビル+リバビリン併用療法が認可されて
国内臨床試験におけるSVR率は97%まで向上しました。

さて、最後に
ウイルスが消えたらそれで万々歳かというと
実は、たまに恐ろしいことが起こります。

消えていたはずのHCCが急速に増大することがあるのです。
これについてはまだ、発表段階のみなので
確定的なことは言えませんが
実際に経験されています。

また、インターフェロンの時代にウイルスが消えてから
何年間も追った研究(広島大学)では
10年で7%、20年で17%の発ガンがあるようなので
ウイルスがきえても安心はできないということのようです。

以上 2回にわたってDAA(もう略していいですよね。笑い)
について話してきました。

あ、前回のメルマガの後
ひとりの先生が 前回セミナーの感想文を
送っていただきました。

その前に送っていただいた先生とともに
御礼申し上げます。

本日のまとめ

DAAは3種類の作用機序に対する阻害剤が存在
今回は最後の作用機序であるポリメラーゼ阻害剤を主体に述べた

このポリメラーゼ阻害剤には
核酸配列の偽物を作らせてRNAの複製をストップさせる核酸型と
ポリメラーゼそのものに結合して複製をとめる非核酸型とが存在

3種類のDAAの組み合わせで5種類のHCV治療薬が存在
それぞれ特徴と欠点が存在するので使い分けをすること

H C V ウイルスは遺伝子タイプが3種類あり
日本人はGenotype 1が多く、DAAの効きが良い群である
しかし、現状では2型にもDAAは効くようになった

DAA投与後も発癌が生じるので要注意である
インターフェロン時のスタディではウイルスが陰性化して
10年で7%、20年で17%の発癌がある
ウイルス消失後もHCCについてはフォロー必要

以上です。

PS. 実はメルマガを書いた後Pubmedを見に行ったら
Kanwal F, et al.
Risk of Hepatocellular Cancer in HCV Patients Treated with Direct Acting Antiviral Agents.
Gastroenterology. 2017 Jun 19. pii: S0016-5085(17)35797-9. doi: 10.1053/j.gastro.2017.06.012.
というのが出ていました。簡単に書くと

DAAによる治療を受け得た患者のうち、SVR(ウイルス駆除達成)は
HCCの発生リスクの軽減と関係している。
DAAがHCCを誘導するという事実は見つけられなかった。

しかしながら、SVRが得られた患者のうち肝硬変が完成された患者においては
HCC発癌のリスクは残存する。
これらの患者には継続的なHCCのサーベイランスが必要。

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DAAについては今日完結します。 への2件のコメント

  1. 秦 康博 より:

    C型肝炎の最近の治療をわかりやすくアップデートして下さりありがとうございます。
    肝炎ウイルスが高率に完治出来る時代となったため、国からの指導もあり、当院でも入院時スクリーニングで肝炎ウイルス感染が見つかり、治療を受けていない方への報告・対応が今年に入り実施されています。

  2. イチロウ より:

    秦先生
     いつもコメントありがとうございます。
     DAAでHCVウイルス疾患が治る時代が来たので
     今後、HCCもどんどん減っていくのでしょうね。
     良いことであるのですが、仕事が減りますね。
     EOB時代(早期に見つけられる)プラス HCC減少の相乗効果で
     TACEは今後10年でさらに減少していくのですね。

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