2016年8月17日のメルマガ
駅前のブラジルの真裏のドトールから
イチロウです。
8月初めの炎天下の
お昼の11時頃
郵便局から歩いて駅の方に向かっていると・・・
高架駅の陸橋に
(電車は下を通っているので私がいる道と橋は同じ高さです)
何か人とらしき ものが倒れているのを発見
その人?物体?は一度手足らしきもの
を大きく上に挙げて
バタンと動かなくなりました。
「こんな昼間に酔っ払いが・・・」
と思って横を通り過ぎようと
考えながら15mくらい手前までくると
通りすがりの人は
振り向きはすれども誰一人
構わずに行ってしまっています。
ただ、一人を除いて・・・
編集後記に続く。
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当院が婦人科の稼働が十分でないため
(どう見てもやる気がない)
めっきり婦人科のmalignancy ,
いや、筋腫さえも見ることが少なくなりました。
しかし、にもかかわらず、他病院の非常勤医として
勤務した場合は、当然ながら婦人科関係の画像診断を
読まざるをえません。
婦人科系の画像や疾患概念も日清食品 いや
日進月歩のため 読影につまずくことがあります。
その代表が LEGH です。
大学病院に在籍していれば 当たり前のように
見ていたはずでしょうが
一般病院暮らしが長くなった私にとって
さらに症例数の少ない当院では
さほど耳にすることができません。
LEGH とは lobular endocervical glandular hyperplasia の略です。
日本語で言えば 分葉状内頸腺過形成
知っている人も フルネームや日本語で
すらすら言える人は少ないでしょう。
概念としては1999年に Nucci らによって提唱された
子宮頸部の粘液を産生する嚢胞性病変のことです。
何が問題かというと Adenoma malignum つまり悪性腺腫
(minimal deviation adenocarcinoma= MDAともいう
ここでは以下MDAと略します。)
との鑑別が問題となる 良性疾患だからです。
MDAは 別名悪性腺腫という良性名称がついてはいますが、
臨床的にリンパ節転移や播種を来たしたりして
悪性の経過をたどる病気で(そのため腺腫の前に悪性がつく)
かつては、ナボット嚢胞が鑑別と言われていたものです。
(私は悪性腺腫という名前の方が馴染んでいますが)
ナボット嚢胞は、完全に臨床的に無害なものですが
MRIによる鑑別がMDAと難しい
とも言われていました。
しかし、今ではLEGH がMDAの鑑別診断の一つに入ってきました。
LEGHは子宮頸部の高位に限局性に位置する境界明瞭な
多嚢胞性の良性腫瘍として認識されます。
MRI所見としては 日産婦誌60巻9号N-216を参考にすると
子宮頸部の比較的高位(体部より)に位置し
周辺に比較的大型の嚢胞が配列し
内部に小型の嚢胞から充実性の高信号部位が存在する
花に例えた
いわゆる コスモスサイン が特徴といわれています。
完全に良性と認識されている
ナボット嚢胞は中型から大型の嚢胞が特徴で
充実性成分は認めない
とされています。
一方、粘液を産生する 粘液性腺癌は
嚢胞の形成はあまり著明ではなく
境界明瞭な充実性な高信号を呈するとされています。
また、MDA は
粘液性腺癌とほぼ類似した境界不明瞭な充実性腫瘤
とされています。
ここまで見ると嚢胞性の構造が主体であれば
基本、LEGH 未満(ナボット嚢胞含む)の良性病変で
診断は容易となりそうですが
ちょっとまったーです。
実は、LEGH に 悪性腺腫や癌が合併することがあるからです。
日産婦誌60巻9号, 2009年 N-298 (ぺージ298と同義でしょう)から
鹿児島大学 辻隆広先生の
LEGHと悪性腫瘍の合併症例12例をまとめた論文があり
その12例のうち 3例にコスモスサインが見られ
コスモスサインがあるからといって安心もできないのです。
コスモスサインで安心すると
LEGH と 過小評価する可能性もなきにしもあらずです。
そこで細胞診などとの組み合わせによって診断することが重要で
この論文 N-217 には鑑別診断の手法が掲載されています。
http://www.jsog.or.jp/PDF/60/6009-214.pdf
超音波で頸部の嚢胞性病変を認めたり、水溶性の帯下
を訴える患者の診断フローチャートを提示しています。
日産婦誌60巻9号, 2009年 N-298 より抜粋、転載
要点を述べると
超音波での頸部嚢胞性病変を認める あるいは 水溶性帯下を訴える患者には
Pattern 1 としてMRIを施行し頸部は多発の嚢胞のみで充実性成分がなしだったら
→ 細胞診が class I, II で胃型粘液が陰性であればナボット嚢胞あるいはtunnel cluster (ナボット嚢胞と類似、鑑別する臨床的意義なし)→経過観察
Pattern 2 MRI上コスモスサインがあるとき細胞診でClass I, II なら LEGH として経過観察か単純子宮全摘
Pattern 3 MRI上コスモスサインあり、Class III → LEGH, AIS/MDA/Ca
*AIS=adenocarcinoma in situ, MDA=Minimal deviation, Ca.= 粘液性腺癌 → 円錐切除or生検 → 病理によって広汎or単純子宮全摘術
Pattern 4 MRI上びまん性・充実性 → 多くがClass III 以上の可能性大→MDA/Ca → 円錐切除or生検 → 悪性腫瘍手術、広汎子宮全摘術?
ちなみにMDAで大量に産生される粘液は
胃型(幽門腺型)の粘液の特徴を有し、
胃型粘液を特異的に認識する
HIK 1083抗体を用いた頚管粘液に対するラテックス凝集反応陽性を示す。
と言われますが、
これによってナボット嚢胞とは鑑別できても
LEGHはMDAと同様に胃型粘液を産生するため鑑別はできません。
以上をまとめて実践読影で使うとすると
放射線科医は
依頼目的に
超音波で頸部の嚢胞性病変(+)とか 水溶性の帯下
と書いてあったら
MRIを見てまず嚢胞が主体か充実性病変が主体かを見る。
小さめの嚢胞のみで構成されていれば、ナボット嚢胞あるいはtunnel cluster
明らかに辺縁に大きな嚢胞、内側に小さい嚢胞及び充実部分が有る
いわゆる コスモスサインがあれば LEGHの可能性をより考えたレポートにして
安全弁として 細胞診が Class III なら、MDAやCa.との合併を否定できないため、円錐切除や生検も考慮して と言う
嚢胞よりも充実性成分主体で一部嚢胞、病変の境界は不明瞭である場合は
MDA や Ca. を考える
と書けばいいと思いますのでパターンとしては
大きく分けて3パターンに成るでしょう。
以上 イチロウでした。
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編集後記続き
その傍らに若い大学生かOLらしき女性が
スマホをもって電話をしています。
それをみて
「酔っぱらいではない?」
「彼女はどこかに電話? つまり救急車をよんでいる?」
と思い近づくと
大柄でやや肥満気味の若いにーちゃんらしき
人でした。
顔を見ると口からは泡を吹いていました。
「や やばい 意識は?」
と思い呼びかけましたが反応はありません。
すぐに脈を取ると
よ、弱い・・・(気がする)
私は 彼の誤嚥を避けるため
一人で彼を側臥位にしようとしていると
今まで誰もいなかったのに
誰かがそれを手伝ってくれていました。
すぐに鉄道会社の職員らしき人と
さらにどこかの店のおじさんが
駆け寄ってきました。
そのおじさんは近くまでよってきて
すぐにとってかえすと
1分後には
氷嚢らしき物を両手に抱え
すぐに若者の脇の下にそれを挿入しました。
えっ?熱中症? こんな若者が?
しかし、周りの人の空気はそんな感じで
誰かが黒いビニール袋を持ってきました。
何のため? と思って
「え、日陰にしたいのね?」と気づき
それを私は引っ張り彼を日陰の状態にしました。
程なく誰かが日傘(いや雨傘だったような)
を持ってきてくれました。
すると、彼が何やら意識を吹き返しつつありました。
呼びかけに何となく反応するようになり
意識状態では III-2からI-3 くらいに回復
そしてついには 名前も何とか
言えるようになりました。脈もしっかり触知可能に
それから救急隊が来るまでとても長く感じました。
(多分救急隊的には早かったのでしょうが)
最終的には救急隊に引き渡し
私たちは 互いに ? こういうときは
何て声をかける? と思い
なぜか「お疲れ様!」 と言って
別れました。
それにしても若者がすぐに意識を回復したのは
やはり氷嚢を持ってきた、傘を持ってきた
おっちゃん達の力でしょう。
普段造影剤アレルギーのみしか対応しない
放射線科医である私は
ただ、彼を横にして、脈をとって ビニールを引っ張って
日陰を作っただけでした。
特に氷嚢を持ってきたおっちゃんは
今回のMVP に間違いありません。
(なお、今回の行動中 私が医師であること
は口が裂けても恥ずかしくて言えませんでした)
以上 イチロウでした。