7項目を使ってグルーブ膵炎とグルーブ膵癌とを鑑別する方法

駅前のドトールより

イチロウです。

さて、先週のカンファランスでの一場面

先生は答えは導き出せました?

解答は Groove pancreatitis

だった のですが、

実際の症例については今のところ

病理の確証がとれておらず推定に過ぎません。

私がカンファランスでそう述べる根拠には

こんな論文を読んだからです。

それは九州大学の石神先生の論文で

Ishigami K, Tjima T, Nishie A, et al.

Differential diagnosis of groove pancreatic carcinoma vs. groove pancreatitis: usefulness of the portal venous phase.

Eur J Radiology 2009, p95-101

です。

膵のGroove 領域はご存知のように

十二指腸と膵頭部とによってはさまれた領域で

普段は隙間らしい隙間はなく、わずかに脂肪があるのみです

あっ ちなみにこの部分を胃・十二指腸動脈が通過します。

しかし、時にこの領域に限局して膵炎を生じることがあり

Groove 膵炎(以下 Gitis)と読んでいます。

厄介なことにこの膵炎は

この領域にできる Groove 膵癌(以下GPK)と

画像的に類似しており(早期濃染なく、遅延濃染)

鑑別が非常に困難と言われてきました。

かつては Gabata T, et al. が

Groove pancreatic carcinoma: radiological and pathological findings.

Eur Radiol. 2003.13: 1679-1684

では GPK 9例 (男4例、女5例)の

画像所見をまとめておられるのですが

非造影のMRI所見として

T1WI で低信号、T2WI で軽度高信号

ダイナミック造影のCTやMRIでの

早期相で濃染せず

後期相にて濃染がみられる

MRCP上全例でCBDの狭窄がみられるが

主膵菅の閉塞はわずか3例(1/3)のみしか認められなかった

ようです

また、内視鏡では十二指腸の狭窄が全例に

十二指腸粘膜生検では7例にCa.との診断が下っています

血管造影を施行した7例全例に

血管のギザギザ状態である encasement

が認められた様です。

論文上は serrated (ノコギリ状)の

encasement と言っておられます。

ちなみに encasement は

(腫瘍浸潤による)不整狭窄 のことです

Sereated encasement で

のこぎり状の不整狭窄 です。

論文はGitisと

対比した論文ではありませんが、

Gitis との鑑別は難しいと言っています。

なので、論文の結論として

GPK か Gitis かの診断には

血管造影の血管のノコギリ状の不整狭窄をみつける

十二指腸生検する の2つが重要と

述べられています。

このことから 従来から

非侵襲的検査のみでの鑑別は難しいと言われています。

他に古くから言われている

十二指腸壁肥厚や

十二指腸壁内およびグルーブ膵炎内の

嚢胞性変化 は Gitis の所見として言われています

この十二指腸壁の嚢胞は

ブルンネル腺過形成を意味しているかもしれません。

なぜなら、Gitis の原因の一つとして

ブルンネル腺過形成が挙げられているからです

ブルンネル腺の過形成の症例はいずれご提示します。

話しをGitis と GPK の鑑別の話に戻すと

今回の Ishigami  K先生の論文では

膵炎と膵癌のダイナミック造影での濃染パターンを

門脈相という 相で評価する ことに着目

されました。

どういうことかというと

膵炎は門脈相で濃染するが

膵癌は門脈相ではあまり濃染がないからです。

Ishigami 先生の論文内では

この門脈相で

Gitisは 中心部分が濃染

GPK は 辺縁部分が濃染する

ということを用いると

鑑別が可能となるということです

 

中心部斑状濃染がシート状の低吸収域内にみとめられるのは

Gitis 15例中なんと14例に認められ、

それはGPK の7例中1例にしか認めなかった

というのです

 

また、PKでは門脈相で辺縁濃染がみられるものの

Gitis では辺縁濃染が0例でした。

 

この2つの所見に有意差がでています。

 

一方、嚢胞性病変はGitis の11/15 ですが

GPK の7例中4例にもみられていて

有意差がありませんでした。

PKもしばしば貯留嚢胞を呈するのでこのような結果と

なったのでしょう

 

ちなみにGitis の特徴だ 的に書いてある論文もあります

以下

Itoh S, et al. CT findings in groove pancreatitis: correlation with histopathological findings. J Comput Assist Tomogr 1994; 18: 911-915

 

また、胃十二指腸動脈は

Groove 内を通過していると言いましたが

実はGitis の時は腫瘤の内側に

GPK の時は腫瘤の外側に浸潤が生じるといわれます

 

おそらくGPKは膵自身のGroove への浸潤と

考えれば胃十二指腸動脈が外側におされるのは

わかります。

 

なお、AJR 2013;201: 29-29  には

総説という形で Gitis の画像が

たっぷり掲載されています。

 

さて、ここまでをまとめると

✔Gitis と言いたくなる所見

①  ダイナミック造影門脈相での中心部斑状濃染

②  十二指腸壁肥厚、十二指腸壁およびグルーブ膵炎内の嚢胞変化

③  血管造影での血管の狭小化とギザギザで不整な狭窄は無い

④  GDAの内側変位

 

✔GPK と言いたくなる所見

①  ダイナミック造影門脈相でのGroove 領域の辺縁濃染

②  血管造影での血管の狭小化とギザギザで不整な狭窄

③  GDAの外側偏移

以上 膵炎膵炎4項目、膵癌3項目の7つを見てみましょう

さらにアルコール多飲歴(グルーブ膵炎と強く関連)とか

腫瘍マーカー上昇の有無 も見てみましょう

それでも

判断がつきづらい場合は十二指腸壁生検

とコメントします

By イチロウ でした。

カテゴリー: 未分類   パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。