48才、腹部腫瘤、前回の回答 

駅前のドトールより
イチロウです。

(アイキャッチ画像は、イギリスのストンヘンジです。もちろん世界遺産)

前回の回答ですが、、、
48才腹部腫瘤を触知、肉眼的血尿を自覚して受診した患者さんですが、

回答は、、、

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Solitary fibrous tumor でした。
単純CT上巨大な右腎腫瘍が見られ、中心部には大きな壊死を示唆する低吸収域を
有する軟部組織吸収域の腫瘤として認められます。

ダイナミック造影では巨大腫瘤内に早期相で蛇行した動脈が入り込んでいくのが
特徴的に見えます。
後期相では辺縁部分が濃染して、中心部は巨大な壊死を生じています。

T2WIでは不均一な中央部分が壊死を示す強い高信号、辺縁が淡い高信号を呈する腫瘤で
T1WIでは脂肪は含まれていません。やや中心部が低信号、辺縁がやや高信号です。
ダイナミック造影ではCTと類似した蛇行した動脈が腫瘤ないに入り込んでいて、辺縁が徐々に造影されてきます。

鑑別としては 腎細胞癌は挙げられますが、
巨大なので悪性の肉腫などの間葉系腫瘍を挙げたくなります。
また、血管の入り込んでいく様は、血管周皮細胞腫(hemangiopericytoma )なども
鑑別に入ってくるでしょうか。

病理所見は腫瘤は約28×18×10cm大で
肉眼的に灰白色調、滑面では多数の嚢胞変性と一部に出血・壊死が見られた
とあります。
ミクロ所見は
血管周皮細胞腫様の構造を示し、線維芽細胞様の紡錘形細胞の腫瘍性増殖を認め
核異型・分裂は乏しかった
特殊・免疫染色ではCD34が血管内皮と紡錘形細胞に陽性であり
SFTと診断されました。

SFTは1931年にKlempererによりlocalized fibrous mesotheliomaとして
diffuse mesotheliomaと区別されて記された疾患
腫瘍の由来は中皮細胞下結合織由来の間葉系腫瘍とされていましたが、
漿膜と無関係ない部位からも発生します。

SFTの病理診断については
紡錘形細胞がいろいろな量の膠原線維を伴いながら無構造に増殖し、
一部にhemangiopericytoma様の構造を持ち、CD34陽性により特徴づけられます。
好発部位は胸膜ですが、
肺内、縦隔、甲状腺、副鼻腔、腹腔内、後腹膜、腎(今回の症例)などの報告があります。

腎のSFTは極めて稀で、平均年齢は50才台です。まとまった画像の報告例はありません。

文献を調べると Solitary fibrous tomor of kidney で92件ほどヒットするのですが
画像に関連する論文は少ないです。画像が見れた報告に関して述べると

Fursevich D, Derrick E, O’Dell MC, et al. Solitary Fibrous Tumor of the Kidney: A Case Report and Literature Review. Cureus. 2016 Feb 11;8(2):e490.
では66才 女性例 腹部腫瘤触知と血尿主訴です。腎から上極外方に突出する腫瘤で
今回の症例と類似した巨大で中央部分が低吸収域で、辺縁が濃染する腫瘤です。
画像はCTの冠状断1枚後期相のみなのでなんともいえません。当提示例との類似点は
大きいことと中心壊死の存在でしょうか。

画像はFig.2より抜粋

Chen Y, Wang F, Han A. Fat-forming solitary fibrous tumor of the kidney: a case report and literature review. Int J Clin Exp Pathol. 2015 Jul 1;8(7):8632-5.
30才女性 例で 60x 45mmの腫瘤で境界明瞭 脂肪を含んだSFTの症例です。
画像はFig.1ですが、拝見すると右腎下極に存在し、外方突出する腫瘤でやや内部不均一なものの上記の腫瘤ほどは中心壊死ははっきりしません。この症例も遅延相のみ1相(腎髄質もよく濃染)撮像の冠状断1枚です。

Ji WT, Hu Y, Wang Y. Case report: Solitary fibrous tumor of the kidney with a NAB2-STAT6 fusion gene. Front Oncol. 2022 Nov 16;12:1045238.

34才女性 例です。大きさの記載は要旨には記載なしですが、画像を見ると結構多血性に見えました。この提示例はダイナミック造影の早期相のみ(髄質は濃染する前)の提示です。一部壊死が見られるものの全体がよく濃染しています。

Tahir M, Campbell R, Moreland H, Madelaire C, Keel CE, Herrera GA. A Rare Case of Solitary Fibrous Tumor of the Kidney. Cureus. 2023 Oct 4;15(10):e46475.

Jiらの例に類似していて、境界明瞭な3−4cm程度の腫瘤で一部に壊死らしきものがある程度で全体がよく濃染しています。早期濃染、後期濃染持続という感じです。

Xie Z, Zhu G, Cheng L, Liu J, Ye H, Wang H. Solitary fibrous tumor of the kidney: Magnetic resonance imaging characteristics in 4 patients. Medicine (Baltimore). 2018 Aug;97(34):e11911.

4例を提示しています。男性2例、女性2例。平均年齢は37.8才です。腫瘤は全部で5個
T2WIでは腎皮質よりも軽度低信号又は等信号との記載がありました。
拡散強調像は病変は正常あるいは軽度高信号、平均ADC値は1.687 とのこと。
手術後24〜36ヶ月の追跡中に1例が死亡されています。

提示画像を見ると拡散強調像ではそれほど高信号を呈しておらず、腎実質よりは高信号です。
T2WIでは腎実質と等信号かわずかに低信号。ダイナミック造影では早期相で濃染して、後期相まで濃染は持続しています。
免疫染色は CD34(+)、bcl-2 (+)など

Wang H, Liao Q, Liao X, Wen G, Li Z, Lin C, Zhao L. A huge malignant solitary fibrous tumor of kidney: case report and review of the literature. Diagn Pathol. 2014 Jan 20;9:13. doi: 10.1186/1746-1596-9-13.
66才女性例ですが、最大径は23cm もある巨大なものでした。症例は悪性のSFTでした。

巨大腫瘤のCTの提示はFig.1の横断像と冠状断像のみで、冠状断像では
当提示例と類似した。腫瘤内に入り込んでいく蛇行した血管が示されていました。
この点は類似していましたが、ちなみ当院の症例は良性のSFTです。

Karaosmanoğlu AD, Onur MR, Shirkhoda A, Ozmen M, Hahn PF. Unusual benign solid neoplasms of the kidney: cross-sectional imaging findings. Diagn Interv Radiol. 2015 Sep-Oct;21(5):376-81.

1例の47才女性例が提示されていましたが、MRIのみでT2WI脂肪抑制像で2cm程度の
小さい結節で、腎実質よりは低信号を示しています。腫瘍の繊維性の特徴を表しているとFig7a で述べられていました。7bではT1WIFS ですが腎実質より低信号、造影単相のを提示していますが、
大きさが小さいためか全体が均一に濃染されていました。

Ichiyanagi O, Ito H, Takai S, Naito S, Kato T, Nagaoka A, Yamakawa M. A GRIA2 and PAX8-positive renal solitary fibrous tumor with NAB2-STAT6 gene fusion. Diagn Pathol. 2015 Sep 4;10:155.

Fig.1で画像がUSとダイナミック造影CTが提示されていましたが、
USでは腎より低信号、単純CTは腎実質と同等かやや高信号、ダイナミック造影で全体濃染し、後期相でも濃染が見られています。

Cheung F, Talanki VR, Liu J, Davis JE, Waltzer WC, Corcoran AT. Metachronous Malignant Solitary Fibrous Tumor of Kidney: Case Report and Review of Literature. Urol Case Rep. 2015 Oct 17;4:45-7. では

悪性巨大20cm以上もある悪性SFTですが、
血管が蛇行して腫瘍内に入り込んでいく様はやはり当科症例に類似しています。

最後にRadiopedia に提示されていた骨盤腫瘍(SFT)はやはり
巨大で中央部分が壊死して、辺縁のみ濃染して、中心部に向かって蛇行した動脈は入り込んでいる様子が部位は異なるものの類似していました。

画像を転載します。

以上、小さい時は全体が比較的よく濃染し、後期相でも濃染は持続し、大きくなるにつれて壊死部分が増加していき、巨大化すると中央の大部分が壊死を示し、辺縁は濃染し、動脈血管が周囲から腫瘍内に蛇行しながら入り込んでいく様な状況になると思われました。

以上です。今日も読んでいただきありがとうございました。
1日前に誤ったメール(未完成メール)を送信してしまい
誠に申し訳ありませんでした。

以下。締め切りが迫っています。
よろしくお願い申し上げます。

佐志先生の教材もお忘れなく

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