大腿出血の時、昨日の症例の回答

駅前のドトールより
イチロウです。

(今日のページの写真はクロアチアのプリトヴィツェ国立公園内。純粋な水の湖、緑の森のカラフルな春の景色をistockphoto より購入添付しています)

先週の土曜日 ほぼ病院からは休みに
連絡など来ないのですが、
循環器外科のDr. より 病院から直接連絡が来ました。

理由は、緊急血管造影をして欲しいとのことでした。
実は1週間ほど前もそのような話があり
CTを見させていただくと左大腿の筋肉内に血腫があって
血腫内の嚢胞性変化部分に造影剤濃度の液面形成が複数箇所にあるのです。

しかし、造影剤の直接の血管外漏出はなく、
直前くらいには出ていたが、止まった? ようでした。
アンギオの依頼でしたが、軟部組織なので
やはり第一は圧迫ではないかと思ったので
圧迫止血を推奨しました。

ところが、、、

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5日経過した土曜日の朝 私のストレッチ中に
病院から、患者様が大腿部を痛がっていて、貧血の改善が得られていない
という電話を先生から直接してこられました。
CTを撮ったのか? を聞くとまだだというので
CTを撮ってください。私もサイト関連ですぐには行けず1時間後には行きます。
通勤時間を含め約2時間後に病院に向かうと電話を切りました。

すると、、、30分後に電話がかかり
止血方法を変えると言われました。
止血用の道具を使うというのです。正確な手法は聞きそびれましたが
その後もう一回かかってきて、CTをとったがエクストラはないとの
ことでした。出血していることは間違い無いですが、
今すぐ止めるような出血はないというのです(背景にはDICがありますし、ヘパリンも
心臓の血栓予防に使用しています)

原因血管は浅大腿動脈からの分岐血管ですが、
細すぎて入れられる自信はないように思えましたし、圧迫止血を推奨したのですが
結局5日間のうちそれでは止血が得られておらず、かつ今出血していない(extravasasionなし)
状況で 血管造影はするべきでしょうか?

これ以上伸ばしてもと思い、私個人的には血管造影だけはやっぱトライはしてみよう
とは思っていますが、もし入らなかったらバイアバーンなどカバーステントで
枝があるであろう場所に留置して終わるということになるかもしれません。
浅大腿動脈のアンギオなんて経験値がなさすぎて困っています。

IVR専門にやられて、経験値の高い先生(JDr.ら)お教えいただけると幸いです。

一方、昨日 ご提示させていただいた症例ですが
年齢も若くて、広範囲の脳梗塞を生じ、出血性梗塞にもなり
会話は片言、片麻痺は完全で寝たきり状態となってしまった方が

痙攣重積発作 と同時に炎症反応かなり高値で血圧低下、腹痛あり
CTを撮影しました。
すると昨日のような結果となりました。

頭部CTは右中大脳動脈領域の広範囲の梗塞と出血で脳室穿破


20日前のCTではやや胆嚢が腫大しており、壁も若干肥厚しているかも知れません。
しかし、頭系の病院だったので、特に症状が乏しかった?ためか
特にこのCT結果からは何もし無かったようです。

そして、上記理由で当院に搬送された時のCTが2枚提示されています。
最初のはダイナミック造影早期で、20日前のCT以後に留置された胃瘻
とよく見ると胆嚢は20日前より腫大しており、一方で壁の肥厚は目立ちません。
小腸の拡張と液体貯留、壁の肥厚が見られています。


そして通常条件だと一瞬では分かりにくいですが、wide window の後期相で
腹腔内遊離ガスがあることがわかります。腸間膜脂肪織も一部で汚さが見られています。

結局手術がなされ、腹壁と胃壁がきれいに固着しておらず、そこから腹腔内に
胃内容物が流れ出し、腹膜炎を呈していたのです。胃瘻の周囲が汚いことがわかります。


そして、胆嚢は壊死性胆嚢炎 と考えられる真っ黒な様相を呈していたので
切除されました。

手術結果は 汎発性腹膜炎(胃瘻の圧着不足による胃穿孔状態)と壊死性胆嚢炎
ということでした。
ショック状態から脱出しましたが
神経症状は悪く、脳波の活動は見られないとのことで近医のそのような病院へ
転院されました。

胃瘻は比較的低侵襲に増設できるため、全国的に爆発的に普及しており
合併症事態も当院ではほとんど見たことがありません。

腹腔内遊離ガスも留置後20-60% 認められるとのデータもあり
必ずしも有意所見とはとれません。しかし、
今回の症例のように腹膜炎症状が確実に出ている場合
やはり合併症として腹壁との圧着不足による胃穿孔が問題となります。

当院ではこのような合併症は未だ見たことがない(忘れた?)のですが
実は他院(おそらく神経系病院)で非常勤のDr. が胃瘻を造設したようでした。
このような合併症も決して忘れてはならないと思ってご提示させていただきました。

なお、胃瘻造設・カテーテル交換に係る 死亡事例の分析
という 一般社団法人 日本医療安全調査機構 が2021年3月に出されたものがあるのですが、
数例の造設時腹膜炎穿孔、死亡例を提示しています。

①80 歳代、誤嚥性肺炎、胃管の自己抜去を繰り返している介護施設入所中の患者。胃体前壁小彎に造設。 術後 1 日目、白湯を注入後に四肢冷感、腹痛、呼吸促迫あり。初回の栄養剤の注入を開始した約 2 時間半後、心肺停止で発見し、術後 3 日目に死亡。 死因は、腹膜炎(疑い)

②70 歳代、進行性食道癌の治療目的に当該医療機関へ転院。経口摂取が困難となり、治療に向けた栄養状態改善のため、胃瘻造設を決定。手術直後から創痛、嘔気持続。術後 2 日目に腹膜刺激症状が強くなり、CT検査で胃壁が腹壁から脱落し、遊離ガスを認めた。緊急手術で刺入部の開大あり、腹腔内洗浄を行うが、術後 22 日目に汎発性腹膜炎で死亡。

③10 歳代、脳性麻痺、てんかん在宅療養中の患者。意思疎通困難、側彎、四肢拘縮あり。腹腔鏡下胃瘻造設術で左季肋部に造設。 術後 9 日目に発熱。術後10 日目、血圧低下し、心肺停止。 CT検査で腹水貯留と遊離ガスを認め、術後 11 日目に汎発性腹膜炎にて死亡。

胃瘻カテーテル交換時の瘻孔損傷・腹膜炎に対して保存的治療が奏功した4例 というのも報告されています。https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/53/2/53_2_248/_pdf

いずれにしても腹膜炎症状は重要な所見で手術をするか否かを判断する必要がありそうです。

以上 救急疾患に関してご提示させていただきました。

DR. Matsumoto の動画を勉強するのもありかもです。

PI-RADS は締め切りました。

なんとなく行う非体系的救急画像診断を理論的画像診断に変えるヒントを世界的エキスパートの松本先生がわかりやすくこの正月に解説しますが、、、

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