先週、先々週の脾臓症例回答

病院のコーヒー専門店から持ち帰って
飲んでいるイチロウです。

さて、前回提示した。脾臓の腫瘤について回答をしていませんでした。

回答として選択肢

1. 大腸癌の脾臓転移
2. 胃癌の脾臓転移
3. 肺癌の脾臓転移
4. 膵癌の脾臓転移
5. 脾臓のリンパ腫
いずれが最も近いと考えるでしょうか?

ということでしたが、、、

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最初にご提示したCTでは脾臓ないに比較的内部均一で濃染する腫瘤が
認められます。向かって左側のスライドでは若干右副腎に結節があるようにも見えます。
しかし、はっきりしません。

次にご提示したT1WIでは特徴的所見はなく、


脾臓に類円形の背景脾実質よりやや低信号の腫瘤が見られ、
ダイナミック造影では徐々に造影効果が現れ、
後期相では中心部は他よりやや漸増濃染がみられました。
少なくとも多血性ではなく、後期相でより濃染する腫瘤です。

拡散強調像では脾臓と同程度に高信号で、同程度に拡散制限がありました。
ここで、よく見ると副腎部分に結節状構造が2つみられ
正常の副腎ではないことがわかります。拡散制限のある結節であり
おそらくMalignancyと推察され、脾臓との組み合わせで
metaではないかと疑い、副腎にmetaしやすい腫瘍と考えると
頻度的には肺癌ということになります。
ということで選択肢の3番の肺癌 をもっとも選ぶことになると思います。

実臨床では以下のCTのように右肺に病変がはっきりと
あるので今回のような状況で原発を想像するということは少ないとは思います。
あくまでクイズ的出題ということでご了承いただければと存じます。

今回の症例はかなり前の大腸癌の手術だったので、そのmetaの可能性は低く
実際右肺下葉に結節があったのでTBLBを施行しました。
しかし、病理は診断に至らず、結局縦隔鏡でLNを生検し、腺癌の診断となりました。
脾臓についてはリンパ腫を否定したいため、別個に生検を行って腺癌が出ました。

脾臓転移は血管豊富な臓器でありながら、転移の発生頻度は低く、転移性癌の3.4%
程度と言われています。脾臓転移が相対的に少ない理由として
①脾動脈が鋭角をなしているため、腫瘍塞栓が脾臓に進入しにくい
②腫瘍塞栓を絞り出すような脾臓のリズミカルな収縮性がある。
③転移性腫瘍を脾臓に運ぶための求心性のリンパ管が存在しないこと。
④脾臓内のリンパ組織の濃度の高いことによる抗腫瘍活性があること。
⑤脾臓転移は無症状で、病状の後期に発生するため、頻度の過小評価がされているため。
などが挙げられています。

脾臓転移の原発巣は
①悪性黒色腫
②肺癌
③乳癌
④卵巣癌
⑤胃癌、大腸癌
⑥膵臓癌
⑦前立腺癌 など述べられていますが、
個人的には覚えていないだけかもしれませんが、②以外はみたことがありません。
①は極めてまれな腫瘍ですし、③、④、⑤、⑥、⑦などはおそらくですが、病期末期に
生じると想像されます。

以上 今日の症例は 肺癌の脾臓転移の症例でした。

参考文献
1)Giovagnoni A, Giorgi C, Goteri G. Tumours of the spleen. Cancer Imaging. 2005 Jul 25;5(1):73-7
2)Compérat E, Bardier-Dupas A, Camparo P, Capron F, Charlotte F. Splenic metastases: clinicopathologic presentation, differential diagnosis, and pathogenesis. Arch Pathol Lab Med 2007; 131:965–969
3)Kaza RK, Azar S, Al-Hawary MM, Francis IR. Primary and secondary neoplasms of the spleen. Cancer Imaging. 2010 Aug 13;10(1):173-82.

以上です。
今日も読んでいただきありがごうございました。

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