Y大学からS大学へ SVRとHCC発癌

駅前のドトールより
イチロウです。

先週、ラジオロジーアップデートと言う
毎年2回 B社とラジオロジーアップデート
との共催の(実質B社主催のようなものですが)
セミナーに 私ではなく部下がいってきました。

今回の当番幹事は
一昨年の総会(2018年)の大会長と
2015年の大会長 の super 重鎮先生による
ものだったため

選んだスピーカーも重鎮の先生方だったようです。
中でも 山梨大学から 埼玉医科大学 へ行かれた
当サイト立ち上げの時に大変ご協力いただいた
市川先生 が消化器のパートを務められ
呼吸器のパートは やはりご協力いただいたことのある
栗原先生 でした。

市川先生がどんなことを話されるのかは
非常に興味深かったのですが
私はその日はいけませんでした。
なので部下から聞いた話と

かつて 私が肝臓の有名な某病院の
カンファランスに参加していた頃
時に 経験していた ある事実
と 彼が聞いてきた市川先生の話とが
一致したものがあるので
その点についてお話ししたいと思います。

肝臓領域に興味のない先生にはつまらないかもしれませんが
その事実とは

”DAA 治療後にHCC が突然出てきて悪さをする” と言うものです。
実際に HCCの読影を日常たくさんされている先生では
ご経験があるのでしょうけれど
日常それほど HCC 関係の読影をしていない先生には
何が???
と思われる話です。
(DAA=direct-acting ativiral 近年使われている
インターフェロンに変わる直接HCVウイルスを退治する薬)

DAA でウイルスを消すと言う行為は
HCCによる癌死、肝硬変による肝不全死を抑制する
はずのものだからです。

私は実際 肝硬変に対して抗ウイルス剤が
用いられ、結果的に線維化所見が取れてしまったという
病理像を 上記の行っていたカンファランスで
6-7年前に見せていただいたことがあります。

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3年前まで カンファランスに参加させていただいていた
某 肝臓で有名な病院では 毎週 問題症例を
提示いただき、私が画像についてコメントする
と言う感じでやらさせて頂いていたのですが

DAAでSVRが得られた患者にもかかわらず
(SVR=sustained virologic response=持続的ウイルス学的著効
つまり、ウイルスが体から完全に消えたままの状態)
その数ヶ月後に突如として進行HCCが出現する症例
に遭遇してカンファランス参加のみんなが驚いていました。

当時最新知見ということで
そこの誰かが論文にしそうなので
他では極力その事実については喋らないようにしていたように
思われます。

今回のラジオロジーアップデートで 市川先生が
SVR後のHCC発がんについて語っていたそうで
ああ、もう世の中には知れ渡っているのだなあと
思いました。

さて、ウイルスを排除することでその後の肝線維化、肝不全
また、HCC出現を抑え、患者の生命予後を伸ばすこと
が最終目的にもかかわらず
皮肉にもHCC がSVR後に出てきてしまう というのは
DAAを使う消化器内科医にとっては死活問題です。

2016 年にスペインから,肝癌根治後の患者 58 名に
DAAのみによる 治療を行ったところ,
中央値 5.7 カ月の観察期間で 3 人が死亡し,
16 名(27.6%)に癌の再発 がみられ,
再発した肝癌の多くが進行癌であっ た
との報告があったようです。
Reig M, et al : Unexpected high rate of early tumor recurrence
in patients with HCV-related HCC undergoing interferon-free therapy.
J Hepatol 65 : 719―726, 2016.

一方、反対論文も出ていて
その理由として そもそもHCCが出現してしまうのは
抗腫瘍活性薬であるインターフェロンを併用していないから
という考えがあったようです。

実際 私が数年前まで担当していたカンファランスでは
ウイルス消失後出てきたHCCは 進行HCCだったわけで
その答えが、インターフェロンを使用していたか

していなかったからか
という単純なものだったのだなら 当時

ご高名なそこの施設の消化器内科医の先生は気づいていたに違いありません。

しかしそうではなく

やはりラジオロジーアップデートで部下が聞いてきた話に
は納得ができないのです。

つまり 話はそんなに単純ではないと思うのです。

米国のC型肝炎治療後の発がんリスクについては
DAA のみ治療 vs. DAA+インターフェロン で検討され、
背景因子を調整すると治療法による発癌率には差がなく,
SVRは治療法にかかわらず同等の発癌抑止効果がある
ことが報告され、日本からも類似の報告があるようです。

同年にメタ解析論文も出て
インターフェロンなしの治療群の方がHCC発がん率が
高いものの、年齢調整をすると
DAA 単独 vs. DAA+ インターフェロンに発がん率の差はない
という結論になっているようです。

Ioannou GN, et al : HCV eradication induced by direct-acting
antiviral agents reduces the risk of hepatocellular carcinoma.
J Hepatol, 2017 Sep 5. pii: S0168-8278(17)32273-0.

Nagata H, et al : Effect of interferon-based and -free therapy
on early occurrence and recurrence of hepatocellular carcinoma
in chronic hepatitis C. J Hepatol. 2017 Nov;67(5):933-939.

Waziry R, et al : Hepatocellular carcinoma risk following
direct-acting antiviral HCV therapy : A systematic review,
meta-analyses, and meta-regression.
J Hepatol. 2017 Dec;67(6):1204-1212.

ただし、まだDAA単独での治療の観察期間が短すぎるので
結論を出すのが時期尚早 なのかもしれません。

少なくとも症例報告的には 散発的に

SVR 後に
進行HCCが出てくる可能性はある と
いう事実は知っておいて損はないと思います。

以上 イチロウでした。

PS. 30日土曜日 に EASY-PI-RADS セミナー
松本先生のセミナー を行います。
募集は 23日 土曜日夜中になると思います。

12月には おそらく膵臓セミナー
初めての EOB-MRI 基礎セミナーを行う予定です。
年末にもう一度 上記セミナー令和元年最終講演で締めたいと思います。

あくまで予定です。

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