腎細胞癌の拡散 AML との鑑別は?他の型とも鑑別

駅前のドトールより

イチロウです。

毎月一回経営会議に部長は出ますが
その門外不出の経営の詳細を見ると
入院が外来収入よりかなり利益になります。

例えば、手術
胃がんを切れば 胃切除で55870点(55.8万円)ですし
全摘なら 69840点(69.8万円)
また、PCIは急性期心筋梗塞に対して
行われれば34,380点
などなど で、
さらに入院時の費用が追加されていきます。

放射線科(読影室)の管理加算は一件でも70点(管理加算1)
管理加算2でさえも180点です。
一日100件読めば かなりの数字ですがそれでも
せいぜい1日18万円しか稼げません。
でそれを施設によっては3-4人で読んでいる訳です
加算1なら3-4人で読んでもせいぜい7万円です。
1日の一人分の給与さえ出ません。

前置きが長いですが
病院の稼ぎの多くは 手術、入院 なんです
例えば 1ヶ月10億稼いで、
7億近くは入院からの収入です。

その手術 が減ってしまえば
病院の収益に大打撃を与えます。

今日はそんな話ではないんですが、

ある科が 久しぶりに腎細胞癌に遭遇し
MRIを出してきました。しかも、偶然他の疾患で
引っかかったRCCです。

多血性でwashout されており、
通常の clear cell type
のRCCであることが疑われました。

ところが なぜか
臨床医は次に MRIをオーダーされました。
め、めずらしい! しかし、非造影で。

非造影となると情報量が少なくなり
実際にはT2WIと拡散強調が重要で、
脂肪の有無評価に inphase, opposed phase
ということになります。

すると、悪性病変を疑ったにもかかわらず
拡散強調像であまり高信号を示していなかったのです
(当院では 以前はある程度やっていたのですが)
RCCに対してバンバンMRIをやる施設は
多くはないと思いますが
構成メンバーが変わってからは
ほぼやらなくなっていました。

しかし、久しぶりに出たんです。

すると上記の様に拡散強調像で光らなかった訳です。
さらに悪いことにinphase, opposed phase をやったところ
CTではわからなかった微量の脂肪が検出されました。

つまり微量の脂肪を含有するRCCと 血管筋脂肪種との
鑑別が画像上問題となったわけです。
お恥ずかしい話
この分野(腎癌系の拡散強調像)は
ほとんど勉強していませんでした。

さっそく最近 旧来から使用していた(おそーい)ADSLから
光通信に変えてもらった(今まではなんとADSL)
読影室の無線LAN環境を使って
MacBook から 検索開始、すると…

Radiology. 2010 Oct;257(1):135-43.

Renal cell carcinoma: diffusion-weighted MR imaging for subtype differentiation at 3.0 T.
Wang H1, Cheng L, Zhang X, et al.

これによると
b値が800の拡散強調で(いまどき1,000ではないのは遅れてますけど)
clear cell type RCC 1.698×10(-3)mm(2)/sec と
3種類(他は、乳頭癌、嫌色素性)の中で最も高いとなっています。
ちなみに乳頭癌は0.884 × 10(-3) mm(2)/sec
嫌色素性は、1.135 × 10(-3) mm(2)/sec

つまりclear cell type は高め
一般的な癌は1近辺か それ以下が多いのですが

カットオフ値 1.281で判断すると
感度 96%、特異度 94% で
clear cell type RCC と他の型とを
鑑別できるのです。

しかし、今 問題なのは AMLとRCCとの鑑別 でしたね。
それは、KJR が答えをくれました。
Korean J Radiol. 2016 Nov-Dec;17(6):853-863.
Comparison of Biexponential and Monoexponential Model of Diffusion-Weighted Imaging for Distinguishing between Common Renal Cell Carcinoma and Fat Poor Angiomyolipoma.

上記論文と異なり 1.5Tではありますが
clear cell type RCC と 脂肪成分の少ないAMLとの鑑別に
クリアな答えをくれました。

それは  またまた、b=800 での論文ではありますが
clear cell type RCC ADC値= 1.71±0.32 × 10(-3) mm(2)/sec
非clear cell type RCC 1.23±0.32
AML 1.10±0.21

です。clear cell type RCCと 脂肪成分の少ないAMLとの鑑別の
カットオフ値は 1.39 で それより高ければ clear cell type RCCとした場合
感度85%、特異度 100%、正診度 88.3% です。

つまり、多血性で 明瞭にwashout される腫瘍性病変を見て
MRIのinphase, opposed phase で若干脂肪があった という場合に
多血性、washout の時点で clear cell carcinoma にCT上絞られますが
稀なケースとして脂肪成分の少ないようなAMLもあり得る場合

MRIを施行して、拡散を行い あくまでb=800の場合の数値ですが
ADC値が 1.39より高い場合は、clear cell type RCCと診断
低い場合は、AMLと診断すればいいのです。

以上 本日のまとめ

1. RCCとAMLの鑑別が難しい場合、拡散強調が役にたつ
2.あくまでb=800の文献であるものの clear cell type RCCはADC値は高めであり
AMLは低めである。1.39より高ければ clear cell type RCCを考える
実際の数値では
clear cell type RCC ADC値= 1.71±0.32× 10(-3) mm(2)/sec
非clear cell type RCC 1.23±0.32
AML 1.10±0.21
3. また、術前診断としてRCCのタイプを分けることができる
もちろん従来の早期濃染、後期washout の戦略は使えるが
腎機能が悪い場合の鑑別に使えない その場合
MRIのADC値が役にたつ  あくまで b=800の場合だが
clear cell RCC     1.698 × 10(-3)  mm(2)/sec
papillary RCC 0.884 × 10(-3) mm(2)/sec
chromophoric RCCs 1.135 × 10(-3)  mm(2)/sec

カットオフ値 1.281で判断するとclear cell type と他のタイプを
分けることができる。

でした。

以上 イチロウ拝

カテゴリー: 未分類   パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。